第十八章 彼の心

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私が今いる所から一番近い部屋に人の気配がする。扉に触れると透き通るように中に入れた。   『よ、よせ、私を殺せばどうなるかわかっているのか!?』   顔を仮面で隠しているが、隠力でわかる。別空間から剣を出し、首元に突き付けている。あれは彼だ。   『この戦争に携わっているお偉方は大方殺した。お前には交渉の余地を与えてやる。一つ、戦争の終戦。二つ、隠力者の基本的な権利。さぁ、どうする?』   『お、お前達隠力者にそんなモノを与えてしまえば必ず事件が多発する!!』   『それじゃあ、譲歩しようか。事件は隠力者が解決すればいい。隠力を養成できる学園を作るんだ。それでも駄目なら……』   剣の先がさらに男の首に近付く。男は観念したかのように両手を挙げた。   『わかった!!条件は飲む。だ、だから武器を下ろしてくれ!!』   彼はゆっくりと剣先を下げる。だが次の瞬間扉が乱暴に開けられ、部屋に多くの武装した人間が彼に銃口を向ける。   『お~っと、どうやら総務大臣様は隠しで部下にお知らせしたのかな?』   『ふ、ふん!!貴様がどうやってこの場所には、入り込んだのか知らんが、いくら隠力者でもこの至近距離ではどうもできまい』   彼は壁を背に武器を捨て、囲まれる。単発的な攻撃ならば彼の隠力でかわすことができるが、ありとあらゆる角度から構えられている。   しかしこれは彼の過去の話だ。この状況をどう打破したのか。  
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