第十八章 彼の心

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『あ~あ、いい条件だと思ったんだけどな』   彼が手の平を拳で固める。その瞬間に囲んでいた人間達は上下左右から圧縮されたかのように押し潰され、赤い液体を部屋中に撒き散らす。   ……空間圧縮。彼が魔生物をまとめて倒すときによく使っていた隠力の技だ。人間に対して使うのは勿論初めて見た。   私が言うのもおかしいが、残酷な殺し方だ。しかし彼はそれを平然とやってのけた。   総務大臣と呼ばれていた人間はもはや恐怖ですくんでいる。   『さ~て、俺を騙したわけじゃん?その報いはやんないと。痛みで気絶しない程度に斬るかな。でも時間ないし、まずは両腕と両足を斬っちゃうか。その後は目、最後に心臓、いや首斬りでもいいかな』   彼の言動からしてもう殺すつもりだ。これが十一才の子供の行動だろうか。   彼が剣を拾い上げ、まさにその言葉を実行に移そうと構えた時、彼と男との間に誰かが割り込む。   『……総長』   彼に稽古をつけていた筋肉質の男。身体中傷だらけで息もきれている。急いでここまで来た事が容易に知れた。   『弱い奴とやるときは酷い顔だ。ま、生後間もなく隠力者として訓練を受けたから当たり前か』   『仮面つけてるんだから見えるわけないじゃん。まったく……総務大臣さん、命拾いしたね』   剣を自空間に消し、壁に背を預ける。   『帝国城は隠力連合で直に制圧される。降伏するなら生き残りの奴らの命は保証しよう。拒絶するならば残念だが皆殺しだ』   そこでようやく総務大臣の男は震えながら何度も首を縦に振る。  
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