第十八章 彼の心

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また視界するモノが変わる。私はずっと彼の過去を見ている。彼は何を示したいのだろうか。   『……なぁ、闘刃。なんでルナ姉さんの隠力を継いだんだ?あの隠力、嫌いだって言っていたよな?』   墓地だ。森の中に多数の墓石が並べられている。彼と闘刃はその中の一つを眺めながら話していた。   『頼まれたんだ。私達の隠力者達を助けてやってくれって。戦うことはお前や蓮花がやってくれるけど、治すことはできない。俺にしかできないことを考えた結果だ』   『ふ~ん。まぁでもこれから隠力者は人間と共存していく事になるし、俺も『快楽殺人者』は封印するよ。俺達が先導しなきゃいけないんだ。それくらいはやんなきゃな』   『宗吉の言う通りだ』   蓮花が花を持って現れる。それを墓の前に置き、全員で両手を合わせ、しばらくの間拝んでいた。   『学園が建設される。ルナ姉さんが望んでいた隠力者の学園だ。私達はようやく普通の生活を送ることになる。あんな争いはもう……したくない』   『俺は結構楽しかったけどね。でもそれを上回る苦しさや辛さがあった。一度だけの体験にしときたいね』   『隠力者である限り戦いは終わらない。果たして共存という道がどこまで通用するのか。先行きは不安だらけだ。それでも俺達はやるしかない』   『まぁまぁ、ルナ姉さんは死んじゃったけど、その意志はちゃんと俺達のここにあるじゃん?』   彼は自分の胸に指を指して笑う。私がいつも見ていた穏やかな笑顔がそこにあった。  
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