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行動はもっと単純でいい。彼の傍にいたい。それでいいと思う。
「ま、もっとこうしておきたいけど、あとは現実の方で」
彼は私の両肩に手を置き、ゆっくりと離れる。そういえばここは彼の精神の中だった。呼びかけに応じてくれたのだから、もうすぐ目が覚める。
「目覚める前に。俺、今どうなってんの?」
「ガデスと戦った後の負傷と隠力の酷使で昏睡状態になっていた。今は研究所にいて、あれから一ヶ月経っている」
「そっか。……クロはこれからどうしたい?」
「私は宗吉と一緒ならそれでいい。ただ、デュランがいる研究所にはいたくない」
でも逃げるだけでは解決しないことも理解している。デュランは私自身が倒さなければならない相手。
「俺はクロの寿命の事が気にかかっていた。魔生物を喰らわないと生きる時間がなくなっていく。でも、違うよな。デュランと決着つけないと、クロはいつまでも苦しむ。たとえ遠い辺境の地まで離れたとしても。長く生き続けたとしても」
「……うん」
「だからクロ、デュランはお前の手で打ち破ってくれ。でも、不安にならなくてもいい。どんな結末になろうとも俺はクロの傍にいて、味方で居続ける。デュランに勝て、クロ」
「うん」
振り払えないくらいの雫が目から落ちる。何故だろう。彼に出会って私はよく泣くようになった。悲しい涙も嬉しい涙も。どちらも私には大切な涙。
宗吉、ありがとう。
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