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瞼が動く。どうやらクロの呼びかけが届いたらしい。目覚めは成功か。
「……ん、お、おぉ?」
「待て。今外す」
吉宗につけていたマスクとチューブを取り外し、ようやく上半身を起き上がらせる。
ん?感動の再会……と思いきや、クロは意外に冷静だった。それは吉宗にも言える。
「おはよう、宗吉」
「うっす、クロ。それに闘刃」
「上手くいったようだな。この治療は初めてだから自信はなかったんだが。立てるか?」
すると吉宗はベッドから離れ、真っ直ぐ立ち上がる。そして俺に親指を上に立ててきた。
問題はなさそうか。
「あ、なんだこれ?」
「監視用の首輪だ。研究所から外に出るときにはある操作をしないと爆発する仕組みになっている」
と言っても吉宗ならば隠力で外す事は可能だ。さて、今からどういう行動をとるのやら。
「そういえば、隠力は使えるか?」
「ん~、お、いけるっぽい」
自空間から何やら衣服を取り出している。本当に便利なものだ。
「着替えながらでいいから聞け。状況は知っているか?」
「おぅ、精神の中でクロから聞いた」
「なら話は早い。お前はどうするんだ?」
「……クロと決めたよ。デュランとは対立する。たとえそれがクロの寿命を縮める事になったとしても、俺はクロの思いを尊重したい」
「……そうか」
俺は偽剣を生成し、吉宗に剣先を向けた。
初めてだろう。お互いが敵になるのは。
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