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懐かしい光景が見える。私の青春はまさにこの場所に集約していたと言っても過言ではない。
隠力養成専門学園。若菜達が卒業して以来の訪問になる。
授業の邪魔にならないよう放課後の時間にやってきたのだが、まだ学生は学園にいるようだ。私の格好を凝視している。
帝国軍服は威圧感があり、はっきりと軍の者だとわかるように作られている。特にこのクロスエンブレムは隠力者である事を示しているため、彼らも見入っているのだろう。
「おねーさんひょっとして軍の隠力者?」
十代前半くらいの女の子が私を見上げて尋ねてくる。垂れ目で優しそうな、私とは正反対の外見をしている。
「あぁ、君らの学園の卒業生だ。聞きたいのだが、若菜先生はどこにいるかな?」
「先生?だったら私が案内してあげる~。こっちだよ」
捜す手間が省けた。彼女は知り合いのようだ。
学園の中に入り、何も変わっていない様子につい顔が綻ぶ。
「君は若菜先生を知っているんだな」
「うん。担任だから。可愛い先生だよ~。隠力の事だとちょっと厳しいけど私は好きかな」
「そうか。私も先輩として鼻が高いな」
「あ、でもね、最近なんだか元気がないんだ。ため息もついてるし」
多分、闘刃の事だろう。彼女は最初にそれを知った。衝撃が大きかったのかもしれない。
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