第十九章 昨日の仲間は今日の敵

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幽閉されている場所はわからない。しかし『読み』はある。この研究所は棟が三つあり、俺は中心の棟にミヤコがいると踏んでいる。何故なら闘刃がまだこの棟にいるからだ。   確かに闘刃は敵になった。だが、デュランがいる事を暗に俺に示した事を考えると、完全にそうなったわけではない。   おそらく闘刃はミヤコ奪還を防ぐ最終防衛線になる。そしてその時にデュランは近くにいない。闘刃は誰かを庇いながら俺と戦う事が敗北を意味すると知っている。   地下じゃない。一階だ。隠力の気配が近くなる。そういえば一階にはえらく広い空間が一つあった記憶がある。   擬似空間から現実空間に戻り、周囲を見渡す。   まるで戦いのために用意された部屋だ。床は武道場のように整備されている。   そこに唯一あるのは隠力者。   「ここはガデスのために造られた修業場だ。あくなき強さをまだ求め、明け暮れている」   闘刃は既に小手と偽剣を生成し、不動の構えをとっている。一対一、それも闘刃とか。   「吉宗、首輪を外せ。万が一デュランに邪魔されては困る」   「へいへいっと」   首輪に両手を添え、念じる。こんな所で俺の裏技を使うとはね。   瞬く間に両手の指はつながり、首にあった物は消滅する。   「ルールくらいはあった方がいいな。気を失うか負けを宣告した方が敗者だ。まぁ、そうしないとお前に不利な状況になる」   「……ヒッヒッヒ、闘刃と試合形式の戦闘か。九年ぶりじゃん」   大剣を握る力が強くなる。俺は隠力者になった闘刃とは戦った事はない。   負けを宣告するというのはないだろう。とすれば気絶した方が負け。    
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