第三章 いざ万国へ

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若菜の目がしきりに瞬きを繰り返す。状況がわかっていないようにも見える。   「先日の件は巌総務大臣から教えてもらったと思う。帝国は少数精鋭で隠力者を万国に送る事を決定した。私と流人は行くことが決定している」   「……でもどうして私なんですか?私は帝国軍ではありませんよ」   「それは承知している。この件は私に一任されているから誰を連れていくのも私の自由だ。それで若菜、君は私の知る隠力者の中で最も感知能力が高い。隠力者の捜索では一番重要な役割を担う。選んだ理由はそんなとこだ」   当然若菜は学園の先生なので木葉学園長の認可は必要である。最高一ヶ月間いなくなるわけだから、下りない可能性もある。   しかし私は最大限若菜の気持ちは尊重したい。   「……私、万国語話せませんよ?」   「安心しろ。私が喋れる」   「帝国軍にいる蓮さんや流人君にとっては足手まといになるかもしれませんよ?」   「ならんな。若菜が修業を怠慢にするはずがない。またさらに強くなっている」   「……あの」   「若菜」   俯かせている顔を名前を呼んで上げさせ、私は本音を問い質した。   「闘刃に会いたくないか?」   それが合図だった。彼女の目からは一粒、二粒と涙が流れ出し、次第に溢れてくる。   「私……会いたい、闘刃君に……会いたいです……」   あいつは幸せ者だ。こんなにも想えてもらって。   「よし、決まりだな」   蓮花、流人、若菜。以下隠力者三名、万国へ入国する。  
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