第二十ニ章 魔生人サヤ

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「でもタイラは成長期を過ぎている気がするが?」   「だから『偶然』なんだ。私がタイラを造った時はまだその事を知らなかった。これは予想になるけど、浸蝕は成長期を餌にしなかった代償じゃないかと考えている。最終目標は浸蝕されていない男性型の魔生人の完成さ。どうだい?面白くないかい?」   確かに。人体研究は倫理的に批判されているし、されてしかるべきとは思うが、新たな生物の誕生というものは興味深い。   デュランは世間的に見れば狂った生物学者だ。しかし元来このような新発見をする者達は普通とはかけ離れている。   「それで、この魔生人はシーザやクロとどう違うんだ?」   「もっと人の世界に馴染める造りにしたんだ。猫の遺伝子を組み込んである。名前はサヤ。実は君に頼みがあるんだけど」   「何だ?」   「サヤの教育係になってもらいたいんだ。どうも私が育てるとシーザやクロみたいに極端な性格になる。これも研究の一環さ」   俺も時間が余っているわけでもないんだが。猫を育てた事もない。しかし魔生人を研究するには最適だ。俺の目的にも添う。   「仕方ない。協力しよう。俺も魔生人の研究はしてみたい」   「ありがとう。では早速目覚めさせよう」   ガラス管内の水が減っていき、中にいた少女は目をゆっくりと開ける。髪と同じ水色の瞳。透き通りそうな薄い色だ。   クロやシーザと比べて少し幼い気がする。身長も若菜より確実に低い。
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