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「ねぇ」
サヤの部屋まで案内する途中で俺の後ろを歩くサヤが声をかけてきた。
「どうした?」
「闘刃は何してる人?研究者?」
「研究者……ではあるな。だが俺はほんの一ヶ月前からだから新米だ」
魔生人を調査するためとはいえ、面倒な事を引き受けたかもしれない。クロやシーザと違ってサヤは精神的にも幼い。
「どうして魔生物の研究者なんかやってるの?」
「それは俺の勝手だ。話す理由もない」
「教えてくれてもいいじゃん」
振り向くと少し頬を膨らませている。何となくそれを指で押してみた。
「な、何すんのよ!?」
ニ、三歩後ずさり、顔を赤くして怒る。しかしそれだけだ。
「お、意外だな。お前のような奴なら口より先に拳が飛んでくると思っていたんだが」
「わ、私はあんまり暴力が好きじゃないの!!」
これは珍しい。俺が見てきた魔生人は全て力で解決しようとする輩だったから新鮮に感じる。
というより隠力者も含めて平和主義者は初めてだろう。
「結構なことだ。だが魔生人の存在意義くらいは知っているだろ?」
「う……知ってる。魔生物を滅ぼす事……だと思う」
「ならいい。魔生人に関してはどれくらい知っている?」
「えっと、魔生物を喰らう事、それが三大欲になっている事、寿命がわからない事、歳をとらない事……であってる?」
人間であった時の記憶は普通に残っているわけか。
「もう少しある。魔生人は魔生物の匂いを感知できる。それに……」
これは言わない方がいいか。いずれ自分自身でわかる。
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