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「それに?」
「何でもない。お前は魔生物にしか攻撃対象としないという制限を行うのか?」
「仇。私、両親を魔生物に殺されてしまったから。でも、復讐なんかじゃない。他の人達が私みたいにならないように、そのために力になりたいだけ。人間の時の私は無力だったから」
……力を欲するために魔に染まった少女。アイツに似ている。
魔生物と隠力者だけが生きる理想郷……。それが生む人間の憎悪。
駄目だな。俺の中で僅かばかり迷いが出ている。これでも人間嫌いなんだがな……。
「着いたぞ。番号をきちんと覚えておけ」
考えているうちに部屋まで来てしまっていた。サヤははしゃぎながら中に入っていく。
「地図は中にある。今日は目覚めたばかりだから特にすることはない。明日の朝、向かえに来る」
「は~い」
返事が聞こえたのを確認して俺は自分の部屋に戻る事にした。それまでに今の状況を整理しておくか。
デュランの理想郷は人間を排除した世界の創造。厳密には人間を奴隷とした世界。
そのためには『戦争』が必ず起きることになる。それは何としても防ぎたい。
……吉宗には矛盾しているように思われるだろうな。理想郷に協力しているようで向こうにも手助けをしている。
あれに気付けばいいのだが。
「闘刃か……」
蓮が正面から歩いて来る。流人には完全にデュラン側についたと認識されたから、俺達は晴れて帝国……もとい羅国とは敵対関係になる。
それを思っているのか、蓮はいつもの蓮でなくなっている。
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