第二十ニ章 魔生人サヤ

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「それに?」   「何でもない。お前は魔生物にしか攻撃対象としないという制限を行うのか?」   「仇。私、両親を魔生物に殺されてしまったから。でも、復讐なんかじゃない。他の人達が私みたいにならないように、そのために力になりたいだけ。人間の時の私は無力だったから」   ……力を欲するために魔に染まった少女。アイツに似ている。   魔生物と隠力者だけが生きる理想郷……。それが生む人間の憎悪。   駄目だな。俺の中で僅かばかり迷いが出ている。これでも人間嫌いなんだがな……。   「着いたぞ。番号をきちんと覚えておけ」   考えているうちに部屋まで来てしまっていた。サヤははしゃぎながら中に入っていく。   「地図は中にある。今日は目覚めたばかりだから特にすることはない。明日の朝、向かえに来る」   「は~い」   返事が聞こえたのを確認して俺は自分の部屋に戻る事にした。それまでに今の状況を整理しておくか。   デュランの理想郷は人間を排除した世界の創造。厳密には人間を奴隷とした世界。   そのためには『戦争』が必ず起きることになる。それは何としても防ぎたい。   ……吉宗には矛盾しているように思われるだろうな。理想郷に協力しているようで向こうにも手助けをしている。   あれに気付けばいいのだが。   「闘刃か……」   蓮が正面から歩いて来る。流人には完全にデュラン側についたと認識されたから、俺達は晴れて帝国……もとい羅国とは敵対関係になる。   それを思っているのか、蓮はいつもの蓮でなくなっている。  
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