序章 非情な現実

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「そんな馬鹿な!?」   思わず机を叩き、椅子から立ち上がる。私はすぐに自分の醜態に気付き、だが顔を歪めずにはいられなくなる。   対面に座る帝国総務大臣は焦ることなく冷静に坦々と話を続けてきた。   「闘刃と宗吉は万国の北西、天獄の境界より先の通称『魔生界』で完全に消息を絶った。内通者からの連絡だ。間違いない」   闘刃君が万国に行っていた事も知らなかった。でも急な用事があってまだ羅国には帰れないとの手紙の通知はあった。その事情とやらがこれだったのか。   「巌さん。この世界で一体何が起こっているんですか?その魔生物というのは?闘刃君はそいつを退治しに行ったんですか?何か助ける案はないんですか?」   まくし立てているのは自分でもわかっているんだが、感情がどうしても先行する。   「質問が多過ぎる。順に答えよう。万国は現在魔生物という新種の生物の脅威にさらされている。魔生物は知能に幅があり、無能な動物のやつから我々と同じ理性を持ったやつもいる。宗吉は偶然その国に行き、流動的に奴らと戦うことになった」   「それで?闘刃君は?」   「闘刃は森国の上層部から密偵を頼まれてな、宗吉を手助けできるならと二つ返事で了承したそうだ」   なんだかんだで仲間を助けようとする辺り、闘刃君らしいのかもしれない。でも、一言相談して欲しかったな……。   仕方ないのかな。自分しか信じない隠力者だから。
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