第二十三章 ミヤコ救出作戦(中編)

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私が望むモノは彼を苦しめる。だから私はザードが言う事を死ぬまで隠すつもりだった。   だがこのままではいつか彼は知る。   私はラスターを使っている以上、シーと比べて魔生エネルギーの減りが速い。それも格段に。   そのうえホムンクルスだから寿命も元来普通の人間より短い。   このままでは余命数年と言われても大して驚かないだろう。   「因果なものだ。貴様はどれを選んでも苦行となる」   突風が真っ正面から来る。翼でなんとか吹き飛ばされないように耐えたが、目を一瞬奴から離してしまった。   私の嗅覚とザードの動き。速さはほぼ同じだった。   今度は重ならない。代わりに私の痛覚が働いた。   長さを変えられる相手が一枚上だった。僅かに届いたのは向こうの攻撃で、肩と膝から血が流れ落ちる。   「貴様の両腕は斬れないが、他は丈夫でもなさそうだな」   重傷ではない。ただ、相手に弱点があると見透かされたのはまずい。   肩や足は私の部位の中で守りにくい場所に当たる。   「わざわざ両腕だけをコクリュウ化しているのは解せんな。何故だ?」   「純粋な魔生物であるあなたには解らない事」   きっかけは宗吉が私に学園時代の女性用の制服をくれた時だった。衣服などは特に気にした事もなかったが、彼が初めてくれたモノだったから嬉しかった。   その時彼は私の脚を綺麗だと言ってくれた。勿論単なるお世辞の可能性もある。   魔生物から見れば馬鹿な理由だと思われるだろう。だけど私にとっては何よりも大事な事だ。  
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