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彼は魔生人としての私も、人間としての私も好きだと言ってくれた。だったらそのどちらも残しておきたい。
「愚かな奴だ。魔と人の狭間にすがる貴様は半端者以外の何者でもない」
「半端な存在だから得られたものもある」
黒爪を消し、コクリュウの瞳が光る。そして両手の手首を合わせ、横に手を開く。
ダブルグランドバスター。それも威力最大だ。
「そんなでかい攻撃は俺には当たらん」
「……」
しかし私は放った。ザードが言ったようにグランドバスターは当たらない。だが避けられたわけではない。逆方向に向けたからだ。
「!?」
ダブルグランドバスターは反動が尋常ではない。地上でやらなければ当然踏ん張りが効かず、放った方向とは逆の方向で力が働く。それは私が飛ぶよりもはるかに速い。
当然ザードよりも。
「行かせるか!!」
逆風が邪魔をする。しかしそれは私の速度を遅めない。それほどまでに勢いは強い。
そして地上に着く瞬間、コクリュウの力を拳に集約させ、バスターブレイクを上回る衝撃波を周囲に放った。
それはとてつもない威力を発揮し、半径百メートルにある物体の全てを消散させた。
周辺にいた魔生物を消し去るのもあったが、本当の目的は別にある。
一つは魔生物への威嚇。もう一つは若菜への目印がわりだ。
「研究所に向かうものと思っていたが……」
ザードが追い付いてきた。そろそろ誘導に気付く頃合いかもしれない。だからこうした。
「その魔生物がボス?」
少し遅れて若菜が到着する。今、この地点からは私の目で研究所を確認できる。
あとはどれだけ時間を作れるか。
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