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学園に寄りたい気持ちもあったが、滞在は短い。直行でギルスへ向かうことにした。
列車に揺られること1時間、帝国へは簡単に来ることができた。
降りてから周囲を探ってみても警戒体制は全くない。
「気味が悪いね。私もここくらいはと思っていたけど」
歩きながら城下街を眺めて行く。やはりデュランの姿は目立つが、それだけだ。近くに隠力の気配はない。
「待ち構えられているかもしれないな」
感知範囲を広げると、隠力が帝国城に集中しているのがわかる。どうも罠の匂いがする。
「デュラン、下手すると反隠力を使われる可能性も考えられる。相応の準備をしておいてくれ」
「そうだね」
手荷物の鞄を揺らしながらデュランは頷く。
手荒い歓迎を受けるならば戦闘も有り得る。その時には役に立つ鞄だ。
城の門に近付くと、二人の兵を挟んで巨漢の男が仁王立ちしていた。
「禅、俺達の出迎えか?」
四年が過ぎてもこの男は外見を変えていない。
「久しぶりの再会がこんな形になろうとはな。……流人から話は聞いている」
そうでないと禅ほどの隠力者が堂々と門の前で立ち塞がるわけがない。
数は……把握しきれないな。さて、デュランはどうするつもりなのか。
「まぁまぁ。私達は争いに来たわけじゃないんだし、とりあえず話だけどもさせてもらえませんかね?」
「……この男が魔生物を造ったデュランという者か」
デュランとは対照的に厳しい表情をして禅はこちらを見ている。
「反隠力装置を闘刃につける。それが条件だ」
やはり。思った通りの展開になったか。
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