第二十四章 四年振りの帰国(前編)

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このままでは隠力者は帝国のいいなりになってしまう。結局のところ、国の経済、法律を動かしているのは上層部だ。総務大臣も隠力者を反発させないためのモノに過ぎない。   「今から動くのは上からの命令か?」   「……それが帝国に属する隠力者の宿命です」   「何故従う?お前程の帝国嫌いを俺は知らない」   少し酷い言葉をかけてしまったか。感情を押し殺そうと必死になっている表情が表れている。   「隠力者を守るためです」   「だが現実は違う」   「わかってますよ!!だけど、俺は……あんな戦争はしたくないんです。醜い争いは弱者を潰します。隠力者だからといって必ずしも人間より強いわけじゃありません。それを守れるのは同じ隠力者だけです」   流人はそれを最後に階下へ走り去る。身を犠牲にしてまで仲間のために戦うか。   強い隠力者になったな。確固たる意志がなければあんな事は言えない。   少しだけ羨ましい。流人は俺にはない純粋な光を持っている。それは輝けと願えば願う程強く光る。   ……今は悩んでいる時ではない。直ぐに四階まで駆け上がり、総務大臣室をノックもせずに乱暴に入る。   「おや、闘刃」   部屋にはデュランと総務大臣の巌が対峙している。話し合いの結果がどうなったのか、総務大臣の目を見れば大方予想をついていた。
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