第二十四章 四年振りの帰国(前編)

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「……理解できないわけじゃありませんが、魔生物と戦うのは人間じゃなく隠力者ですよ?正気ですか?」   「武器があれば人間でも戦える。そのための帝国軍隊だ」   決心は揺るがない。巌は隠力連合の中では珍しく中立派だった。相互理解による人間と隠力者の共存をまだ信じている。   「デュランとやら、帝国は魔生物とは敵対する」   「では、羅国もそのように考えてよろしいと?」   「当然。しかし、我らは自衛が最優先行動だ」   デュランは口元を緩ませて少しにやける。   「理性が足らない魔生物は現在野放し状態でしてね、いやまぁ国家間を行き来する程の魔生物はいないので勝手に来るというのはありません。来るのは私が指示した時です」   「ではそなたを捕まえれば万事解決と?」   雰囲気が変わる。巌は武器、特に銃火器の扱いに長けている。隠し持っている可能性は大だ。   「もし私が二日経っても帰らなければ侵攻するように、従えている魔生物には伝えています。無抵抗な人間を喰らう魔生物という光景を直ぐに見られますよ」   デュランはごまかしている。従えている魔生物は皆人間を喰わない奴らだ。ただ、羅国も森国もその辺りの情報を知らない。脅しの一種にはなりえるか。   「……ほぅ。しかしこちらも無策でのさばっていたわけではない。国家を相手にするということがどういうことか、そちらもよく考えた方がいい」   勝機があるのか?巌はハッタリなど言わない主義の男。   ……ひっかかるな。
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