第二十四章 四年振りの帰国(前編)

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「勝てるか?俺に」   「!?」   隠の圧力と殺気を強めにかけた。全員の身体が後ろへ勝手に動く。双子妹、颯、京子は完全に硬直している。本当ならこれで大概の隠力者は止められるんだが、禅、泪、流人はやはり強靭な精神力を持っている。   「闘刃よ、貴様そんな技を……」   「隠の圧力を広げ、殺気を交えることによって精神に直接訴える。殺気は多くの人間を殺してきた奴にしか身につかない。戦争の代償で備えた力だ」   戦争で前線を戦い、生き残った隠力者は数少ない。人間を殺し続けた奴もまた同様だ。   「隠の圧力を受ければ精神の調子が落ちる。隠力にも数値化できるものがあってな、隠の圧力がそれに該当する」   完全硬直でなくとも、身体に重りがついたような感覚に陥っているだろう。これで遠隔攻撃がない泪と禅も封じた。   「流人、お前は人間と協力して本当に魔生物と戦えるか?憎くないか?デュランは俺に似て冷酷な奴だ。罠に嵌めて必ず隠力者と人間に亀裂を作らせる」   「俺は……この国に、守るべき者がいます。だから、負けません」   この心は折れないな。流石は齢十の歳で戦いをしてきただけはある。   階段を下りきって城の正面扉を抜ける。あと数分はまともに動けないはずだ。追跡もできないだろう。   「流人」   「えっ……っとっと」   内ポケットから小さな手帳を流人に投げて渡した。渡す機会はこの時だけ。   「俺が万国で知り得た魔生物の知識が書いてある。隠力者として魔生物と戦うのなら目を通しておけ」   「え?」   「じゃあ、またな。次に会う時は戦場だ」   俺の今回の目的は隠力者に今一度人間との関係を考えさせること。そして対魔生物の対抗手段を教えることだ。   こうでもしなければ隠力者は……。  
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