第二十五章 四年振りの帰国(後編)

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「……隠力者は魔生物にやられてしまうんじゃないかと思ったんです」   少し長く話したかもしれない。しかしこの国に来てからの一通りの説明を学園長は最後まで聞いてくれていた。   本当なら寄るつもりはなかったが、学園長は俺に医療の道を教えてくれた先生で、学園で一番尊敬している先生でもある。それに世話にもなった。伝えておくべきだと思う。   「理性の高い魔生物は人を喰らう欲はないけど喰らう事によって寿命を延ばす。ややこしい奴らだねぇ。それで、ガデスってのは極論倒せないのかい?」   「森国の機械武力と羅国の隠力を合わせれば倒せるとは思います。個では無理です。あれは最強の『個』ですから」   だがそんな二つの国がうまいこと連携できるはずがない。魔生物をヒトの共通の敵と世界が認識しない限りは。   「上級魔とやらはヒトに似た容姿と聞く。なんとか判別できるモノはないのかねぇ?」   「……難しいですね」   判別……隠力者は相手が隠力者かどうかはわかる。それを考えると危害を加える者を魔生物と見なしてもいいかもしれない。   では人間はどうか。奴らは俺達と魔生物の区別ができない。『変な力を持っている』が共通点だから知った顔でなければ到底無理な話。   「いずれ人間は混乱し、特異な存在全てを敵と見なします。デュランは狡猾です。必ずそれを利用します」   少し話し過ぎたか。だが学園は言わば隠力者の宝庫であり、流奈姉さんの遺産でもある。戦争が始まり、狙われるのはまずここだ。   学園の隠力者教育も整ってきたとはいえ、生死を分ける戦いは簡単にできるものではない。相手がヒトではないなら尚更だ。   先生はあまり人間が好きではない。おそらく人間との協力にも否定的。懐柔という言い方は変だが、学園が反対すれば帝国も留まれると思っている。  
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