第二十五章 四年振りの帰国(後編)

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沈黙は長い。やはり危惧しているのは生徒だろう。今や数年前に比べて格段に平和になり、隠力者の軍事利用は縮小されつつある。   経験不足が年々起こっているらしい。   「……この学園で先の大戦を経験した奴はもう私しかいない。だから生徒達は昔よりも親人で人間に対して抵抗がなくなってきていてね、残念だけど闘刃の提案には乗れないよ」   「そう……ですか。では、これだけでも」   俺は懐からディスクを取り出し、渡した。   「何のデータだい?」   「俺が魔生物に出会ってからこれまでの様々な記録を残しています。帝国で流人にもメモ帳を渡しましたが、あちらは戦闘用、こちらは基礎についてです」   基礎データは紙媒体では無理がある。幸い、先生は機器に詳しいし、この保健室には森国から貰ったデータ処理機器もある。   「おやまぁ、つまるところこれで対策を練れと?」   「情報戦は必須事項です」   「ありがたく貰っとくけど、闘刃は大丈夫なのかい?これは両方に加担している事になるよ」   「構いません。そうでもしなければ最善になりませんから。それに、誰も俺を殺したがりませんよ。どちらも俺の利用価値を知っています」   長居はできない。そろそろ出発しないと怪しまれる。   「時間はなさそうだねぇ。じゃあ最後に、学園から派遣した若菜は今どうなっているんだい?」   学園から?……まさか若菜は教師をしているのか。   ならば明確に答えておかないといけないだろう。  「強くなるための最後の修業をしています。それが済めば若菜は魔生物と戦っても生きていけると思います」  
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