第二十五章 四年振りの帰国(後編)

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強さの渇望を満たすには限度がない。若菜は平穏よりも血生臭い戦いの場を選んだ。   俺の存在がそうさせているのは自覚している。もはや意志は変えられない。ならば俺ができる最大限の協力を。   「隠力者は所詮人体兵器。戦う事を善しとされ、安穏を許さない生涯となる。この世が人間で埋め尽くされている限り。……流奈は否定的だったけどねぇ」   先生が大戦の時に言っていた言葉だ。流奈姉さんは人間に親交的だったからよく口喧嘩していたのを覚えている。   「魔生物はある意味私達の存在を試しているのかねぇ。近付いてきた平和な世界からまた引き離される」   「……ん?」   保健室に誰かがやってくる。扉を開けたのは顔見知りだった。   「双子姉か」   「お久しぶりです。闘刃さん」   俺が来たのをどこかからか聞いたのだろう。格好を見るに双子姉も教師をやっているようだ。   「若菜には……会いましたか?」   「あぁ。相変わらずだ。今は流奈姉さんの師匠の元で修業している」 それを聞き、双子姉は目を閉じて息を大きくはく。心配性も昔と変わらずか。   ……宗吉はミヤコの奪取に向かっている。ミヤコが奪われたらデュラン側の戦力は半減すると見ていい。それほどネクロマンサーは有利に働く。   そこからどう動くかは俺も予想できない。ミヤコを取り戻せたとしても討伐協会には勝ち目がないからだ。   現存している生命体でガデスを滅ぼせられる奴はいない。国家の力でしか倒せないと思う。   「……もう一つ寄る所があったな」  
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