第二十五章 四年振りの帰国(後編)

5/7
前へ
/457ページ
次へ
‡   帝国城及び城下街から列車で離れ、ひとまずこれで追っ手が来ることもない。鞄の中は窮屈だが、まだ不用意に姿を現すわけにもいかないだろう。黄色の髪はこの国では目立つ。   「自然が多い国だね。文明はどうかな?城って辺りが古臭さを感じさせるけど、電気を使っていたね。最近発達したように見えたかな」   周りに誰もいない四人掛けの特等席とはいっても、デュラン様の変装は来た時と同様の常識はずれになっている。   「なんだか故郷を思い出す景色だね」   「……デュラン様?」   その顔は普段したこともない表情だった。何かに想いをはせているような一面を見せている。   「私は最初、殺された妻を生き返らせたいがために魔生物を造った。しかし容姿を似せても性格は違う。記憶もない。おまけに私とは対立する」   「デュラン様の力があれば従わせることも可能なのでは?」   デュラン様の『波長』は全ての生きし魔生物を意のままに操ることができる。だがデュラン様はそれを使いたがらない節がある。   「でも実はそんな所も今のミヤコは妻に瓜二つだ。私の妻も病弱ながらよく私と意見衝突していた」   デュラン様のこんな笑顔は私が見てきた限り初めてだ。少し嫉妬してしまいそうになる。私はデュラン様をこんな風にはしてあげられない。  
/457ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加