第二十六章 ミヤコ救出作戦(後編)

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「人間嫌いのデュランがわざわざ人間の研究員を使うと思うか、という話だ」   「まさか……人工有機生命体?」   学園にいた頃に戦った森国の戦闘兵器。確か、ブラッド機関だったか。   「ブラッドとデュランは旧い知り合いだったらしい。一介の研究者であるデュランがこのような財力を持っているのはそのためだ」   そういえばブラッド機関は政府から多大な資金を援助してもらっていたな。   だがブラッド機関は消滅したはずでは。ゼクトも自滅したのを聞いている。   「エレベーターは地下四階までしかない。地下五階は上級魔達の階層だ」   エレベーターに乗り、地下四階まで直ぐに降りる。蓮が案内役をしてくれるのか?   「地下五階にはガデス、ヤマがいると思う。というのも私は地下五階には行った事がない」   なるほど。ここからは未知の領域か。   ヤマもガデスも一対一では戦った事がない。試してみたいとも思うが、俺は強敵と対峙した時、目的を忘れる傾向がある。最悪ばれてしまってもいいからミヤコを連れ出す。   「……宗吉は私を軽蔑するか?」   突然蓮は脈絡もなく俺に問いかける。不安そうな表情は隠すつもりもないらしい。   「どうして?」   「私は帝国を裏切り、ここにいる。かつての仲間と幻の師を天秤にかけて後者をとった。今まで後悔のない選択をしてきた私は初めて後ろめたさを感じている」   背中を押してもらいたいんだろうか。半端な立ち位置にいることも拍車をかけていて、今の蓮を如実に表している。   これが本当の蓮とも言える。蓮はいつも仲間の後押しで前線に立ってきた。カリスマ性があり、上に立つ者と評される彼女はその言葉によって自らを奮い立たせ、そこにいる。   共依存。それが成り立つ時の蓮は強い。だが、己のために戦えないのが蓮の弱さだ。
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