第二十六章 ミヤコ救出作戦(後編)

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ここいらではっきりしておいた方が蓮のためかもしれない。   「蓮は誰のためにここにいるんだ?俺や闘刃のためか?」   「私は……師のために」   「そう、ガデスのためだ。それに幻なんかじゃない。遺伝子は記憶を受け継ぐ。羅刹流を使えるのが証拠。蓮は本音で動いたんだ。誰もその選択を間違っているとは言えない。今俺にやっている事、別にガデス自身が何か不利益を被っているわけじゃない。だから蓮は協力している」   「確かにそうだが……」   簡単に割り切れるわけもないか。これまで約十年間に渡って尽くしていた事だ。   「これだけは断言できる。ぶれると蓮は弱い。隠力は精神依存なんだ。……案内、ありがとな」   俺は背を向けたまま地下五階を走った。闘刃の言っていた座標はかなり近い。ガデスはミヤコの奪回阻止など絶対にしないだろうから、守っているのはいるとしてヤマのみ。   そしてヤマは聴覚で敵を察知する。   座標と一致している部屋の前まで来て俺は感覚的にわかった。ここはミヤコ以外、誰かいる。   部屋に入る直前、いやノブを回そうと手を添えた時、開けると同時に開いた方向へ身体を捻った。   その瞬間開け放たれたその扉から勢いよく鋭い突きが飛び出る。   壁を突き破り、大きな穴を空ける。両目を黒い鉢巻きで縛った男。   「これを避けるとは。流石は宗吉殿」   「匂いか」   聴覚だけじゃなかった。ヤマは魔生物だから人間に近い匂いもかぎ分けることができる。   戦うか、機を伺ってミヤコを救出するか。
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