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擬似空間から自空間へ繋ぎ、そこから一本の縄を取った。通常の縄とは違う、強度の高い特別製の物だ。
あらかじめ健太に用意してもらっていた。俺もこんな事態を予想していなかったわけではない。
その縄でミヤコと自分を完全固定させ、両手を離しても落ちないようにする。
そして壁に背を向け、廊下を一望できるような体勢で現実空間に移動した。
「……いない。多分階段を上がった先まで行ったな」
地上に出れる一階まで行かなければ俺は隠力を使っても出られない。待ち受けているのならば、戦闘は避けられない……か。
相手の場所はおそらく階段終着点。とすれば戦う足場は階段。
できれば見つからずに脱出したい。何か方法は……。
「あった」
そうか。だから闘刃はあえて残していたのか。
直ぐに俺は隠力を感知し始める。この距離ならば簡単に見つけられるはず。
……よし、いた。
気配を完全に捉え、対象感知による空間移動を行った。
地下一階。恐らく彼女の部屋だろう。彼女は目を閉じ、正座をしたまま瞑想している。
「……来たか」
俺が到着すると同時にその瞼を開け、ゆっくりと立ち上がる。まるで俺がここに来ることを予想していたかのような立ち振る舞いだ。
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