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列車の振動に揺られながらどのくらい経ったか。それまでとは違う大きな揺れが生じ、いきなり何かを掴まないと倒れるくらいの衝撃を受ける。
「止まった……?」
だが乗客は喧騒を始め、状況が混乱し出していた。
すると前方の車両から痛い悲鳴が聞こえてくる。万国の人々はそれで察してしまったのだろう。次々と後ろの車両へ逃げていく。
「蓮さん」
「襲ってきたんだろう。非常事態のようだな。乗客の慌ただしさが物語っている。行くか」
無言で私達は頷き、前の車両へと走る。
「うわぁ……」
血だらけの人間の死体が無惨に転がっている。それに何体も。
異臭が漂う中、私達は人間とは異なる別の生物を見た。
首がなく、腕や脚の筋肉が異常に発達している二足歩行の何か。全身が濁った泥水のような色をしていて、赤黒い口だけが大きく開かれている。
「こいつが、魔生物……」
しかも一匹じゃない。見える範囲で五匹。外から窓を割って侵入してきているようだ。
「数は向こうが多い。連携して倒すにも場所が狭い。まずは一匹ずつ。行くぞ」
先行し、蓮さんが速い踏み込みで魔生物に突っ込む。
「遅いな」
人間なら腹の部位になる場所に強烈な下突きを送り、魔生物を一匹まるごとこの車両の一番奥まで吹っ飛ばす。
「なるほど、人間よりは硬い」
殴打された魔生物は全く動かない。絶命したのか。
だが他の魔生物は標的を蓮さんに定めた。
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