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魔生物の気配はほとんどない。それもそのはず、亡きがらがそこら中に散らばっている。
若菜ちゃんの位置は……あった。それほど遠くない。
空間転移で別の隠力地点へ移動し、降り立つ。
「ハァ……ハァ……宗吉……さん」
肩で息をしながら槍を支えにして立っている。若菜ちゃんは相当無茶をしたんだろう。怪我はないようだが、精神疲労が酷い。
彼女の周りには数え切れないくらいの魔生物が転がっている。まさか全部?
どう見積もっても百くらいはある。
「動ける?ミヤコは助けたから離脱しよう」
「まだ……クロが……」
彼女が上空に指を向け、俺は目を凝らして眺めてみる。
何か二つの物が戦っている。ぶつかり合いながらも均衡した戦いが見てとれる。
「いつから?」
「もう一時間くらいは。でもどちらも本気は出してない感じだった。地上で戦ったり上空に行ったりの繰り返しで……」
「なるほどね……」
俺が外に出たことに気付いてくれないだろうか。時間に猶予はない。これはデュラン達がいない間にしかできない。
「フッフッフ、騒がしいから外に来てみれば」
しまった。背後からの気配に俺達は直ぐさま素早く後退する。
「甦ったのを言伝に聞いて安心したぞ。やはり強き者は死ぬべきではない」
ガデスが不気味に笑っている。源蔵の遺伝子を受け継いでいるようだが、性格まで似通っている。この戦闘狂っぷりは今は色々とまずい。
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