第二十六章 ミヤコ救出作戦(後編)

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能力を使えばすぐに撤退できるが……。クロを見捨てることはできない。   「その背負いものは邪魔だろう。その童女に渡せ」   「ど、童女!?」   まぁ三メートルはあるガデスに対してその半分くらいの体格しかない若菜ちゃんは子供に見えるか。仕方ないっちゃ仕方ない。   「子供は戦いの場に相応しくない。早く退け」   「私はこれでも二十歳だよ。それに隠力者でもある」   弱まっていた隠力は復活しつつある。自らを奮い立たせるすべを身につけているとは。   「そんな事は百も承知。童女よ、力不足だ」   「!?」   若菜ちゃんが急に動かなくなる。眼力で脳に直接命令されたか。   いよいよもって俺がやらなきゃいけないようだ。   「ガデス、眼力を解け。お望み通り、戦ってやる」   「そうこなくてはな」   瞬間若菜ちゃんの身体が自由になり、苦しそうに息をはき続ける。   強くなったとはいえ、彼女はまだ死線をくぐり抜けたことがない。それでも充分だ。役目はしっかりと果たしてくれた。   「若菜ちゃん、ミヤコを連れて例の場所まで。……頼めるよね?」   「ハァ……ハァ……わかってます。足手まといにはなりませんから」   何か思うことがあるのだろう。だが口には出さず、堪えて自分にできることをやろうとしている。   大丈夫。焦らずとも若菜ちゃんは強くなれる。   ミヤコを代わりに担ぎ、彼女は隠力を使って高速で走っていった。  
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