第二十六章 ミヤコ救出作戦(後編)

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しかしこれで俺が中心地点に立つことができた。   左手に黒い陽炎を浮かび上がらせ、大剣を片手に構える。   「ほぅ、それが奥の手か」   奴は必ずこの場に直接攻撃に来る。狙うは隠力を使うために必要な目。あそこを消滅させれば。   「見せてみろ!!その力を!!」   鋭い正拳突きが襲い掛かる。その瞬間、俺は座標を特定し、誤差も少なく空間移動を行った。その時相手の瞳の前に俺が映る。   黒手は確実に奴の視界を遮り、直撃する。   だが反応速度が常軌を逸していた。黒手を受ける直前、僅かに首をずらし、片目を防いだ。   「見事だ、宗吉。我が片目、お前にくれてやる」   一つだけ、計算違いがあった。ガデスは戦いに躊躇いなどない。そして痛みに苦しむよりも勝利にこだわる奴だ。   片目を失いながらも戦闘は続いていた。   「剛気掌!!」   空中に浮いて身動きがとれない俺に踏み込みを入れた掌打を押し込む。身体を捻って腹部を避けられたのは恐らく運だ。   代わりに犠牲になったのは利き腕。たった一撃で骨を砕き、血だらけの腕に変えた。   しかし名誉の負傷だ。黒手で消滅させたものは二度と再生しない。奴に弱点をつけることができた。  追撃の横蹴りを空間移動でかわし、アリの巣の外へ脱出する。   右腕の感覚がない。ここで粘って戦えば俺は多分死ぬ。それはクロとの約束に反する。
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