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「……脆いな。そう思わんか、宗吉?」
対峙しているガデスが片目で俺を見下ろしながらそう呟く。
「人間……もといお前は隠力者か。肉体が脆すぎる。当たれば致命傷、攻撃は回避しかできない。お前のその黒い煙、たいした攻撃だ。だが両刃の剣としてその意味を成していない」
違った。片目を失い、ガデスは弱体化すると思っていたのは見当違いだ。さらに闘志を燃やしている。
「源蔵とやらはお前達の武の師らしいな」
「それを何故!?」
「俺はガデスであって源蔵ではない。その男の事はわからぬ。だが意志は此処にある。奴は最強を夢見た。そして俺はその志を継ぎ、今こうして君臨している」
クソッ、言葉に惑わされるな。ガデス自身が言っている。源蔵ではないと。それでも写し身に見えてしまう。
「お前はその志に背くのか?ならば構わん。潰してしまうまでだ。しかしお前を殺したくないと奴の遺伝子が訴えている」
意志の強さが俺とは比較にならない。蓮や闘刃が味方するわけだ。
俺だって……源蔵には生きてもらいたかった。流奈姉さんが母親代わりなら源蔵は父親だ。
俺はその父親を手にかけようとしている……のか?
「宗吉!!」
答えが出る前に俺の名を呼んでくれた者がいた。
彼女は俺を有無を言わさず掴み、低空飛行でその場から離れる。
血の流れが酷くなってきている。隠力が途切れる前に最低限の事はしておかなくてはならない。
俺は動かせられる利き腕を伸ばし、黒い空間を造る。そしてそのままクロと共に入り込んだ。
とりあえず、この作戦は成功だ。
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