第二十七章 秘密

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彼は今集中治療室にいる。左腕はもはや原型を留めていなく、最悪切断も考えられたらしい。それを治せると断言してくれたあの医者を私は信じた。   「お疲れ様。宗吉さんが入って大分経つけど、平気?」   「大丈夫。私は普通じゃないから。……それに私の責任。彼を連れて早く脱出すべきだった」   ザードが彼を不意に攻撃することを恐れた結果がこれだ。   簡単にため息が出てしまう。私は彼を完全に理解していなかった。ガデスが現れ、彼は直ぐに退散すると思っていた。闘刃と組んで戦いながらも負けた相手だ。一対一ならばそれは避けるはず。   しかし彼はまともに戦った。悪く言ってしまえば、命を粗末にした行動をとったことになる。   「宗吉は私が考えていたよりも馬鹿だった。何であの時すぐに逃げなかったのかわからない」   「……クロ、宗吉さんはひょっとしてクロを置いて脱出することを良しとしなかったんじゃないかな?」   若菜は平静なままで抑揚なくそう言う。   でも私は空を飛べるから私を心配するのは見当違いな気がする。   「一度、クロはザードに追い付かれ、やられている。多分宗吉さんはそれが過ぎったんだと思う」   「それは……そう、だけど」   互いを理解するのは難しい。いっそ相手の心がわかったらいいのに。
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