第二十七章 秘密

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若菜はミヤコの様子を見てくると言い、走っていった。ミヤコも未だ意識が回復していない。無茶な作戦だったとしても代償が大きかった。   それから三十分くらい経った後、治療室からあの医師が出てくる。   疲れた表情の中にも妙な笑いが浮かんで見える。   私がいることに気付き、その顔は苦笑に変わる。   「治せたことには治せたんだけど、麻痺が酷い。リハビリが必要だね」   「リハビリ?」   「腕が元通りに動かせられるように訓練することだよ。ま、利き腕じゃなくて運が良かった。意識は戻ってるから、少しあっとけば?」   それを聞いて私は直ぐさま治療室に入り、彼の様子を見る。   中腰でベッドに座っていた彼が軽く挨拶するように手を上げる。それは利き腕の方であり、一方はほとんど包帯で巻かれ、ぶら下がっている状態だ。   「あんがと、クロ。あの時連れ去ってくれて」   「……礼には及ばない。けれど、無謀な戦いはもうしないで欲しい」   「おっと、無謀ではなかったよ。ガデスの片目を失うことに成功した」   失う?上級魔は古代生物の影響で再生能力が強く、眼球さえも元に戻せる可能性が高そうだが。   それを危惧した上で彼は失ったと言っているのだろうか。   「俺の黒手に触れた物は物質であればその存在を消滅させることができる」   彼は利き手に黒い煙のようなモノを発現させ、近くにあったメスを手に取る。するとメスはまるで手品のように消え、無くなってしまう。   私も初めて見た。彼の隠力にはこんな離れ業もあったのか。
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