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でかいだけに足元はおぼつかない。簡単に背後につくことができた。
しかし奴は腕を左右に広げ、回転して接近するものを防ぐ。
「凄い風……」
「流人!!」
呼ばれたと同時に奴の動きが止まり、風が収まる。
氷だ。氷結の衝撃波が上手く決まった。
「ハッ!!」
蓮さんの横蹴りが奴の脚に入り、不自然に曲がる。
まだやられてはいない。奴は近距離にいる蓮さんに向け、勢いよく拳を落とす。
それを避けず、あえて蓮さんは競うように同じく拳打を重ねる。
圧された奴はカラダをのけ反らせ、その隙に無事な方の膝に裏拳をかました。
背中が前のめりに。私は好機と見なし、電圧を一点集中させた槍を力の限り奴の胸部に突き刺した。
さらにその高電圧を一気に流す。
「アァァァッ!!」
噴き出した血だまりもが焦げ、カラダを地につける。
「やりぃ~、若菜ちゃんいいね!!」
笑顔の流人とは逆に蓮さんはあまり嬉しそうではない。いや、これは怒っているようにも見える。
「若菜、返り血は受けていないか?」
「あ、はい。焦げて蒸発したみたいです」
「ならいいが、不用意な血飛沫は危険極まりない。魔生物の血は溶解性が高い。以後気をつけてくれ」
私の心配をしてくれたのか。確かにその通りだ。
「ま、でも電圧による攻撃は魔生物には合っているみたいだ。その調子で次も頼む」
「はい、ありがとうございます」
何だか昔に戻ったみたいで表情が緩む。
今回の事で私達の隠力は魔生物にも通用することがわかった。
……鋭利な刃は透き通るように私の顔を映す。
私はやっぱりいやらしく笑っていた。
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