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焼け焦げた魔生物の亡きがらは燃やされたわけではない。微かに残る静電気が証拠として残っている。
「兄貴、これ本当に人間の仕業かよ?」
「弟よ、魔生物同士は滅多に争うことはない。ミヤコ様のような例外でない限り」
珍しい倒され方をしていると聞いてわざわざ討伐協会から来たのだが、期待外れではなくてよかった。
刺された傷の周りの血がない。匂いを嗅ぎ付けると天井辺りに多く成分として残っていた。
「ゾルマ様、ゲルマ様」
「構わんよ。後処理は俺達がしておく。お前達は戻れ」
部下を帰し、さらに匂いを深く研ぎ澄ませる。
「やはり人間の雌の香りがする」
「女!?、人間の女がこいつを倒したってかい?」
「そう慌てるな弟よ。と言いたいとこだが、人間の雌はこんな強かったか俺も疑問だ」
とりあえず今の匂いを記憶し、首から先を持ち帰ることにする。
「弟よ、切り刻んでおけ」
「はいよっと」
包丁で弟がみじん切りにしている間、考えを巡らしてみる。
高電圧を放射する物質は一応あるにはあるが、突き刺した上で流し込むようなモノはなかった気がする。
フラガは他国から来る船を主に迎えている。まさかとは思うが、外国の人間が?
「他の幹部にも伝えておくか……」
ミヤコ様とリーン様がいない今、タイラが実権を握っている。俺はあいつがどうも好まない。魔生人は俺達を喰らう嫌な種族だからだ。
どうせなら奴が魔生界に行って行方不明になればよかったものを。
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