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扉を閉め、身体が自然といつもの屋上へと出向く。
学園で三年間、学生をしてそのまま卒業後に先生となった。赴任して今年で二年目。こんな穏やかな生活も悪くないかなと思い始めていた矢先だった。
ベンチに座り、空をぼんやりと眺める。
巌さんはこの情報を最初に私に知らせてくれたみたいだった。だから急遽学園に来たらしい。
私が先生じゃなかったら無心で万国へと行くところだ。
この目で確かめたい。真実を。
「若菜、やっぱりここにいたのね」
「あ~、理絵ちゃん。じゃなかった。理絵先生」
私と同じくパンツスーツに身を包んだ黒髪長髪のツンデレさんがやってくる。
理絵ちゃんは普通に頭が良かったので数学や化学を教えている。学園に残ったのは私と理絵ちゃんだけなので何かと彼女は心強い。
「今は昼休みだから先生じゃなくていいわよ。巌さんから聞いたわ。まるで別次元の話ね。俄かには信じられない」
「うん。私も。……ねぇ、理絵ちゃん」
「そうね。私は残念だけど助けに行く資格はないわね。あの闘刃さんと宗吉さんの前じゃ、私はかえって足手まといだもの。邪魔になるだけ」
彼女はよく客観視できている。現実問題、そうだ。宗吉さんも闘刃君も私達より強い。それでも魔生物は……。
「とまぁ、私ならそうするわね。でも若菜は違うんじゃない?約束、したんじゃないの?」
「約束……」
四年経ったらまた会おう。その時でも気持ちが変わってなかったら。
闘刃君、私はまだ変わってないよ。
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