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「どこに行ったのかはわかるか?」
「魔生界に行ったっす。あそこは魔生物研究所があるから多分魔生物の大元を潰すために」
……妙な話だ。闘刃君にしても宗吉さんにしても自分の国でもない、言ってみれば無関係な国のためにそこまでするものなのか。
私も健太君の発言を信じていないわけじゃないけど、この内容ならあんな露骨に言いにくそうにしないと思う。
「ねぇ、健太君。話変わっちゃうけど、どうしてこっちに住み着くようになったの?」
「手紙にも書いた通りっすよ。万国は魔機物っていう特殊な物質が出回っていて面白い物が造れるっす」
「本当にそれだけ?」
「何言ってるんすか。それだけっすよ」
怪しい。実はこの部屋に入った時から薄々感じていた。
ここはおそらく健太君だけじゃない。別の誰かも住んでいる。
きっかけとなったのは匂い。家の材質に鼻をとられていたが、その中に混ざる香水のような香り。
まだ不審に思うことはある。健太君は私達を視認するまでわからなかった様子だったけど、私達は隠力者であり、互いの気配は探ればわかる。
私は首都についてからずっとそうしていたが、健太君の隠力は彼と同じく視界に捉えるまで感知できなかった。
健太君は普通の隠力者なので意識しないと特有の気配は消えない。
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