第五章 万国の事情

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「話を戻すわね。デュランは上級古代魔生物を量産しようと試みたのだけど、ある問題が浮き上がったの。それは上級古代魔生物の個性。デュランの方針に気に食わない連中が内部で出始めたわ」   さっき聞いた討伐協会の事だ。これがあの戦争に繋がるのか。   「戦争で痛み分けとなった後、デュランは自分にとって都合の悪い魔生物を殲滅するために新たな種族を造った。それが魔生人。ある程度成長した人間に古代生物の遺伝子を組み込ませることで魔生物を喰らう生物を世に出現させた」   何て男だ。デュランという奴は異常精神の持ち主に違いない。いつの時代も天才は奇才というが、この男もその類だろう。   「でも魔生人も古代生物を組み込んでいるからムラがあるみたいね。デュランの忠実な駒となったのは一つだけ。魔生人は今のところ三つ。一つは討伐協会副会長のタイラ、もう二つは姉妹で姉のロゼ、妹のシーザ。ロゼは別名でクロと呼ばれているわ。クロはソウキチと一緒に旅をしていたそうよ」   クロ……宗吉さんと共にいた魔生人。『姉』というのだから性別はあるのだろう。   ……何故かクロという魔生人が危険な身となっているのではと思ってしまう。まぁ、宗吉さんだし。   「本題に入るわ。今魔生界はデュランが強力な結界を張っていて中に入れなくなっているの。勿論ソウキチもトウジンも会長らも確実にそこにいるわ。だけど未確定の情報ながらクロが魔生界の外側にいる事が報告されているの」   「つまりそのクロという魔生人を発見できれば」   「大きな手がかりにはなるわね」   んー……随分長かったけど、まずはそのクロという魔生人を捜し出せればいいという結論には達した。   しかし一ヶ月では足りないような感じがする。万国はただてさえ広い国なのに、潜伏場所も特定されていない者を見つけるのはかなりきつそうだ。   せめて隠力者のように気配がわかれば楽なんだけど。
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