第六章 深い森の中で

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時々現れる魔生物らを適当に倒しながら双眼鏡でそのような影を捜索しているのだが、何せ霧が濃い森だ。見通しが悪いので結果として接近するまで明確にわからない。   不気味な森で変な雰囲気を醸し出しているのは若干怖い。魔生物の方は人間の匂いにつられ、単独行動になってから直ぐに出没したのだが、ある程度隠力で始末していると学習して出て来なくなる。   魔生物にも生存本能はあるようだ。   にしても霧、か……。   霧は水分なのだから蒸発させれば景色は晴れる。しかしこんなに全体化していると少し消えたところでどうにもならない。   「なんかもっと効率的な方法があってもいいと思うんだけどな……」   どうも無謀な気がしてくる。ただ目で追いかけるだけでは埒があかない。   事前に『クロ』の好きな物でもメイデンさんに聞いておくんだった。……でも魔生物しか喰わないんだっけ。   万国は写真とかもまだそんなに流通していないらしくて実際の顔もよくわからない。言われた外見は黒髪で片方の髪を縛っていて容姿は十代。身長は私より高くて流人君より低い。そして可愛い服装をしている……らしい。   「!?」   一瞬の出来事だった。誰かが迫る音を感じ、背後を振り向いた瞬間に私は静電気を起こして何かを防いだ。   「ってぇ……」   橙色の長髪を揺らして獣の毛を纏った魔生物が対峙する。人型ということは上級魔!!   「てめぇ、今何しやがった!?めっちゃ痺れたじゃねぇか」   「?」   槍を相手に向けて警戒はするものの、メイデンさんの一件があってから短絡的に魔生物を悪と見るわけにもいかなくなった。   しかし私は万国語がわからないので対話もできない。
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