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「あ?なんか喋ったらどうだ?……お、まさか俺を見てびびっちまったか?」
聞き慣れない言語の羅列が頭を駆け巡る。長髪が邪魔して表情もよくわからない。
「まぁいいや。この森は弱肉強食なんだよ。殺すんだったら食う。または持ち帰る。殺して放置は止めてくんねぇか?」
理解不能だ。蓮さんを呼ぼう。
相手が何か独り言を言っている間に指先に隠力を一点で発現させ、それを上空へ向けさせる。
まだ歩いてそんなに経ってないから時間はかからないだろう。
「って反応せんのかい!!……何やってんだ?」
不審に思われたかも。だったら意識を反らせるしかない。
考えたのがこれ。ポケットからコインを出し、例のコイン回しを見せてみる。
「お、お、おぉ~。何だそれ、どうなってんだ?」
いきなり近付いてきたので反射的に静電気を張ったが、その必要もなかったのかもしれない。長髪から覗く瞳は好奇心で満ち溢れており、敵意は微塵もない。
この魔生物もいい魔生物?
「……何をやっているんだ?」
多分急いで駆け付けてくれたんだろう。速い呼吸間隔で蓮さんが私達の様子を疑惑の目で眺めている。
すると長髪の魔生物は我に返ったように私から距離をとり、身構える。
「っち、仲間か。……な~るほど。俺を油断させておいて数で倒す腹積もりか。卑怯な奴だぜ。危うく騙されるところだった」
蓮さんはしばし首を傾げていたが、思い立ったかのように指を鳴らす。
「そこの長髪。私達は異国の者だ。私はこの国の言葉を話せるがこの子は話せない。意思疎通が上手くいってないと思うぞ」
「……あ?異国の人間?」
蓮さんの言葉も解読できないものになっている。ということはこの状況をわかってくれたらしい。なんとか助かった。
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