第六章 深い森の中で

6/6

25人が本棚に入れています
本棚に追加
/457ページ
要約すると振り出しに戻る……かな。ラルフさんが言うには最近では見ていないと。   情報が信頼できるものではなかったとも判断できるけど、どうなんだろう?   蓮さんはまだラルフさんと何か話しているし。   「ラルフ、お前は半魔半人と言ったな。では、人間も食料なのか?」   「……まぁよ、多分そうだと思うぜ」   「多分?」   「美味そうな匂いってのは本当だ。だがよ、俺は半分人間だからどうも拒否反応が出るみたいだ。勝手に吐き出しちまうんだよ。だからめっきり食べちゃいねぇ。安心し……」   彼の言葉が途切れた時、私達は物凄い殺気を感じ、直ぐさま四方に別れて周りを探った。   ……いない。そんなはずが。誰しもが今の感覚を共有していた。勘違いなどでは決してない。   「!?上だ!!」   「え、わっ!?」   突如突風が吹き、霧が霧散する。光のもとに姿を見せたのはフードを被った魔生物であった。なにやら錫仗のようなものを持っている。   人間に見えるが人間はあのように空中浮遊はできない。   魔生物は錫仗を振り、先から炎の渦を放出する。   「危ねぇっ!!」   流人君は即座に氷力壁を発現させ、私達を囲む防御壁を生成する。  だが炎は木に燃え移ることで連鎖的に炎上し始めていく。   「流人、先行して早く森から出ろ。私が奴をどうにかする」   「そんな、蓮さん……」   有無を言わさず流人君は私を引っ張り、その場から走って離れる。   いや、走っても間に合うのか。炎の量があまりにも多い。   「クソッ、なんで森が……お前ら、俺に乗れ!!」   ラルフさんは人の姿から四足歩行の狼のような獣に変化する。もはや急展開過ぎてついていけない。   私と流人君を強引に背中に乗せ、風を切り抜く速さで木々の間を颯爽と駆ける。   「り、流人君」   「大丈夫!!姐さんが負けるかって!!」   そうだよね。負けない……よね。
/457ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加