第八章 魔生人(後編)

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重苦しい雰囲気が漂い、時計の針だけが目立って聞こえる。   蓮さんはそんなに多く語ってくれなかったが、クロさんが森で暴れているのを食い止め、その後気絶した彼女を首都まで連れ帰り、今は健太君の所で寝かせているという状況に至っている。   ただ、彼女は魔生物中毒という症状にかかっているらしい。話によると、魔生人である彼女は魔生物を取り込む事により強くなるが、弱い魔生物ばかりを大量に喰らうと理性を失い、暴走してしまうようだ。   眠りについている彼女はまだ少女に見える。この少女が蓮さんとまともに戦ったなんて到底思えない。   「やばいやばい。これは素晴らしい病気をお持ちで。おっと、失言だ。失礼」   顔が青白く、痩せ細ったこの男の人はフォードという。討伐協会で唯一の人間の幹部であり、人外専門の医者で、魔生物や魔生人にも精通しているらしい。   「フォード、治りそう?」   「自然治癒かな。カラダの中にまだ魔生物の成分が残っているし、それが彼女の一部となれば目を覚ますよ。上級魔生物にも人間の食い過ぎで同様の症状が生じる。ん~、興味深い患者だ」   治らない病気ではないことがわかり、皆から安堵した空気が出る。   彼女から事情を聞きたいのは山々だけど、彼女も何か色々な事があったのだろう。普通ならば魔生物の大喰らいはしないらしいし。  
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