第九章 それぞれの思惑

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「具体的には?」   蓮さんの目はまだ何も語っていない。まずは静観というわけか。   「近々密会としてクロに使者からの言づてがあると俺は考えている。表面上は賛同させ、魔生界へ入る方法を探らせる。最悪その方法さえわかればクロは向こうの手に渡ってもよい」   「……それはそちらの幹部の方々も同じ意見で?」   幹部達はそれぞれ視線を交わし、代表してメイデンさんが手を挙げる。   「私達の最大の目的は会長であるミヤコと副会長であるリーンの奪回。そのためには手段は問わない。これがこちらの総意よ」   「まぁ、確かに私らも闘刃と宗吉を取り戻したいところだが……流人、若菜、どうだ?」   私が返答に戸惑っていると流人君が先に意見を述べてくる。   「俺は彼女がその作戦に賛成してくれるのなら別にいいと思う」   その発言をメイデンさんから経由して会長代理に届くと彼は鼻を鳴らして口を開く。   「クロは必ず賛成する。奴は一刻も早く魔生界に行きたいはずだ。そして自分だけでは奴の目的が不可能である事も理解している」   「根拠はあるのか?」   「俺がここで言うのは失礼だ。クロ自身に聞けばわかる」   「……らしい」   何か私達が知らない事情を向こう側は知っているようだ。   けど、利害は一致している。反対する理由も特にない。   「全員納得したようだな。では作戦の詳細の説明を始めよう」  
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