第九章 それぞれの思惑

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私より身長は高いが、まだ少女と言っても異論はない。   「初めまして。私はクロ。暴走していたところを助けてもらったそうで。感謝する」   眠っていた顔を見たときから思っていたけど、彼女が魔生物を喰らうとはどうも考えられない。   こんな可愛い魔生人と宗吉さんが旅をしていたなんて。身の危険を感じなかったのか。   「うわぁ……想像以上。宗吉さんに襲われたりしなかった?」   結構酷い質問だけど私も同じ事を思った。   「私は魔生人だから見た目よりもはるかに腕力が強い。人間くらいの硬度ならば握り潰す事もできる。だから彼もそんな事はしない。勿論私も……しない」   間があったのが気になるが、それよりクロさんが羅国語を話している事に今更ながら気付いた。   宗吉さんに教えてもらったのかな?一体いくつ何だろう?学園の制服を着ているのはなんで?思いつくだけでも聞きたい事は山ほどある。   でもその前に。   「私は若菜、こっちは流人君。私達も隠力者だから外見よりも強い力は持っているよ。えっと、クロさんは……」   「『クロ』でいい」   「じゃあクロは宗吉さんや闘刃君の行方を知ってる?」   するとクロは翼を消し、ベッドの上にゆっくりと座る。なんと、人と同じ形態をとることも可能なのか。   「貴方達には話しておきたい。私が見た彼の最後を」  
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