第九章 それぞれの思惑

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‡   中々しつこい。ザードは本気になっていなく、明らかに私をこの魔生界に閉じ込めるための時間稼ぎをやっている。   ということは魔生界の完全閉鎖まではまだ時間がかかる?   「よそ見をしていていいのか?」   光の刃が風圧を伴って私の髪を数センチ刈り取る。今のも。ザードは私を殺すつもりで戦っていない。   「やな奴……」   「嫌われて結構だ。命令は絶対だからな」   こんな所でちまちま戦っていても埒があかない。ザードは防御や回避に徹しているから倒すよりも先にこうした方がいい。   「!?」   翼を目一杯広げ、彼がいる方向へと全力で飛ぶ。ザードもかなり速いが……。   「リーン、あいつの邪魔を」   「了解」   森から次々と木が伸び、ザードの進行を妨げる。さらにこれは私の姿の隠れみのにもなる。   「……クロ、ソウキチの所行く?」   「魔生界が閉じる前に彼だけでも脱出させる」   「ザード、強い。でも少しの間、止められる。ソウキチ、助けてあげて」   私の傍から離れ、空中に立つ。一時の瞬間も無駄にはできない。私は何も言わずに彼の匂いを探し、飛び続ける。   「段々近く……!?」   彼がいる。けど、匂いはその者が持っている生命力もわかるから、気付いてしまった。   彼は死にかけている。
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