第九章 それぞれの思惑

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‡   絶句した。私も流人君も言葉が出てこない。   クロの悲しみは誰にもわからないだろう。彼女だけが今もなお背負っている。   「彼と闘刃がどうなったのか、私も知るすべはない。私がいなくなったとすれば条件も何もない。だから始末されていても不思議ではない」   「そいつはどうかな?」   この部屋に一つしかない扉が開き、蓮さんが入って来る。   でも今言った事って……   「あんまり込み入った話をしているものだから入るに入れなくてな。扉越しに聞いていた」   「そうだったんですか」   「あなたは?」   ……あ、クロはまだ蓮さんとは面識がなかったか。   「私は蓮花。宗吉、闘刃とは幼なじみでな。魔生物中毒とやらは大丈夫なのか?」   「多分。しばらくは喰らえないけど。それで、さっきの言葉はどういうこと?」   私も気になる。考えたくはないけどクロの話からは闘刃君と宗吉さんの生存は低い。   「あの時は話さなかったんだが、実は私はクロの救出を協力して行った。……魔生物のザードという奴だ」   「ザード……」   クロの話に出てきたデュランの仲間。でも何で?   「若菜と流人も見てはいる。森を燃やし尽くした奴だ。あれはクロをおびき出すためだったらしい。奴は最後に闘刃と宗吉は生きていると言っていた。だが……」   蓮さんは突然言葉を濁す。いつもの……というと違和感があるが、何からしくない。   「私を助けたのも奴の都合があなたと一致しただけ。デュランの一味は全て私にとっては敵と考えている」   「そうか。じゃあ、私達にとっては味方でいいか?」   差し出された手をクロはしっかりと握り返す。   「彼も闘刃も信頼できた。だから私はあなたも信頼したい」   「強力な仲間が増えたな」   まだ目的は達成していない。だけど、いける気がしてきた。   闘刃君と宗吉さんが生きていることを信じて、今はこの任務をやり遂げよう。  
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