序章 非情な現実

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‡   闘刃の奴め、私に内緒で宗吉の所へ行っていたとは。   妙に虫の居所が悪いのを直に感じる。単独で動きたがるのはあの男の癖に近い。頼るという言葉がないのも。   「そんなに幼なじみが心配か?」   屈強な大男が書類と睨み合いながら私に問う。   「当たり前だ。なんなら私だけで構わん。万国に潜入する。魔生物だが何だか知らんが全部蹴散らせばいい。ねじふせるだけの力は持っているつもりだ」   だいたい消息不明という情報も怪しい。あの空間隠力を持つ宗吉と分子を操る隠力を持つ闘刃が死ぬわけがない。   魔生界は特殊な境界である天獄の境界で遮られ、閉鎖されているらしい。多分その中にいるから行方不明扱いになっている。   「……そういえば宗吉はどうやって万国に行ったんだ?羅国からは物資船以外なかったような」   「森国からは船が出ている。宗吉は何かツテでもあったんだろう。……知らんかったのか?」   初耳だ。卒業後は私もすぐに帝国軍に入ったからその辺を把握していなかった。なるほど、森国ならば行けないことはない。   「私も森国に行く」   「おい、蓮花。何を言って……ちょっと待て!!」   腕を掴まれて止められた。だが互いに隠力を使うつもりはない。軍とはそういうもの。   「離せ、禅」   「物事には順序がある。蓮花は森国語が話せない。どうしてもと言うのなら泪に連絡をつけてやる」   「仕事が早い奴だな。私の動きはお見通しか」   「違う。こいつを見ろ」   禅から渡された紙には私達隠力執行部へのある通達が書かれていた。   それは万国への隠力者の派遣。   「勿論行きたい奴らだけだ。軍も強制はしない。隠力者は帝国軍にとっても大事な戦力。が、同時にこの機会は隠力者もとい羅国の強さを知らしめることにもなる。お前は……聞くまでもないか」   国に利用されようが関係ない。私は行く。  
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