第十章 姉妹の再会

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落ち着け。ここでどうあがこうが彼は目を開けてくれない。私にできる事を考えなければ。   「でも彼は何故生かされている?私との交換条件のため?」   「ガデスの意向ですわ。強き者は殺さず。デュラン様も理想郷のために必要だとおっしゃってましたわ」   理想郷というのはデュランにとってのか。奴の企みに彼が利用されるのは釈然としないが、とりあえずは彼が無防備のまま殺される事はない。とすれば。   「じゃあシーは何のためにここへ?」   「ロゼお姉様が宗吉に呼びかけてくれたら、ひょっとしてと思いまして」   試す価値はあるかもしれない。それが私にできる事ならば。   ベンチからシーが立ち上がり、周囲を眺め始める。そういえばシーは割と活発で私のように部屋に引きこもる性格ではなかった。研究所内では外によく出ていたのも彼女だ。   「研究所へ戻る気があるのなら、明日天獄の境界へ来て下さいまし。魔生界へお連れしますわ」   軽く会釈し、首都の街へ姿を溶け込ませていく。   私があのデュランの所に。でも以前とは状況が違う。私の勝手な想像だが、デュランは私を操る事をあまり良いとは思ってなさそうだ。   奴は私の最大限の力を引き出させたいと考えている。それも理想郷のためだと見なしている。   そして私はできれば彼の傍にいたい。もう離ればなれになりたくない。   ならば、私が取れる最善の選択は……。  
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