第十一章 彼女の決断

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‡   速く。もっと速く。そんな祈りをしなくてもラルフは懸命に走っている。しかし焦りは止まらない。   最初に気付いたのは私なのだから。   「蓮さん、まさか空を飛んで行くなんて……」   重力を操るだけでそんな応用もできるものなのか。にしても物凄い切り替わりというか。あの紙を見せた途端だったから驚く。   「姐さんは前々からそうだよ。けど今回は少し急いている気もする。まぁ若菜ちゃんの情報を聞く限り気持ちはわからないでもないかな」   例の紙にはクロが通る道筋と正確な合流時間、それと。   ……いや、この目に入るまでは口に出さない方がいい。   「でも流人君がラルフを連れて来てくれて本当に助かったよ」   「以前燃えて失くなった森の近くでうろついていたのを偶然見つけただけって。なぁ、ラルフ?」   「あぁ?何言ってるかわからん。とにかく天獄の境界まで行けばいいんだろ?こっちも全速力だ。あんま喋らせんなよ」   何か言っている風だったが突風が強くて聞き取れない。その前に言語が通じないのはあるけど。   草むらを離れ、遮る木々がなくなり、空が丸々見える。今日は満月……。   「っ!?」   私はそれにすぐに気付いた。『視界に』ではない。感知だ。   探っていたわけでもないのに。  
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