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気絶まではいかなくとも相当な衝撃を与えられてしまった。まだうまく立ち上がれない。
「知ってるか?超純水は絶縁体になり得る。生成に時間がかかって一度くらいしか有効に使えないが」
そうか。闘刃君は分子を操れる。空気中の水を使って……
「もう少し考えて戦った方がいい。そうしなければ魔生界に来てもぶざまにやられてしまう」
「それって……」
「時間だ。クロが帰る。安心しろ。俺が向こうに帰れば結界は消える」
闘刃君の肩に白い鳥が舞い降りてくる。ここから去るつもりなのか。
「待っ……」
「待て」
力強い声が私の隣から聞こえる。見上げてみて私は目をそらした。今彼女は相当キレた目をしている。
「若菜、すまなかった。空中でも一悶着あったんだ。でも私が来たからには大丈夫」
「蓮か」
闘刃君が振り向き、歩くのを止める。
「今日の私は少々……いや、かなり気が立っている。お前がそのつもりならば目を覚まさせてやらなければならない」
隠力の気配の強さが尋常じゃない。対して闘刃君は呆れたような表情をしている。
「蓮。吉宗も俺も昔のままじゃないんだ。そろそろ自分の欲望を押し付けるのは止めにしないか?」
「どういうことだ?」
「言った意味のままだ。俺達には俺達の生き方がある。それとも、俺を連れ戻すか?ここで」
闘刃君が余裕をもっているのも頷ける。蓮さんは相性が悪い。闘刃君の結界はいかなる物理攻撃をも防ぎ、また反撃もできる。
特に闘刃君に戦う意志がなければほぼ無敵と言っていい。
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