第十二章 境界の先に

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ラスターは古代生物の中でも特殊な存在だったらしい。オロチが言うには。   「……ロゼ。起きろ」   起きる?私は寝ているつもりはない。そう思っていたのだが、目を開けるとそこは別世界だった。   私を中心に三つの生物が囲んでいる。九の首を持つ巨大な蛇であるオロチ、まさしく伝説の竜の姿通りに存在するコクリュウ、そして。   この世界でも眠り続ける黒髪で褐色の肌の女性。   まさかこの人間みたいなのがラスターの真の姿?   「こうやって集まるのは初めてじゃねぇか?ケッケッケ」   「…………」   「あ、う~ん?また食べるの?」   まともに喋っているのはオロチだけ。コクリュウは無言。ラスターは寝言。   ここは私の意識の世界?のようだ。必死に呼びかけていたからこうなってしまったのかもしれない。   「それで、ラスターは起こせないの?」   叩き起こしていいのならそうしたいのだが、今の私は普通の人間と変わらない。せいぜい空を飛べるくらいか。   どうすべきか悩んでいるとコクリュウが重い腕を上げ、それをラスターへと落とした。   かなり大きな音がしたと思う。床が壊れていないのが不思議なくらいだ。   しかしその衝撃でもラスターが潰れていないのだから驚く。   「……ん、何?食事?ってあれ?」   起きた。赤い瞳が私を映す。やっぱり人間にしか見えない。   「え~、ロゼってこっちに来れるの?せっかく好き勝手に食べてたのに」   「あなたがラスター?」   「こんちは。ラスターよん。はじめまして」   どうしてわからないが何か顔がしかめられる。   あぁ、ふざけた奴だからか。
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